オールジャパン体制は国家総動員体制か、新国立競技場は「負のレガシー」か

(左から順に、国立競技場将来構想有識者会議で会談する森組織委会長、竹田JOC会長、舛添都知事。 平田秀祐撮影)

(ATR Japan)新国立競技場の事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)が7月7日、その総工費を2520億円にすると決めた。

その記者会見では、膨らんだ費用の総工費について説明責任を果たしているとは言いがたく、河野一郎理事長らJSC幹部は費用をめぐる混乱の責任の所在についても明言を避けたまま終了した。会議の出席者からは懸念を示す意見はあったものの、現行案を見直すような議論には発展しなかった。

今回、総工費2520億円には、大会後に設置予定の開閉式屋根などの費用は含まれていないことや、改築後50年間に必要な約1046億円の大規模改修費は完成後の収支見込みに含まれていないことなどが明らかになった。さらなる費用負担増の懸念がさらに高まったのである。また、建築家の槇文彦氏らが提言していた、新国立競技場のアーチ構造や開閉式屋根の取りやめによる費用削減の代替案についても、JSCは文部科学省の判断だとし、採用には至らなかった。

これらのことから見えるのは、国民の視点を持たないまま現行案を強行する姿勢だ。会見での河野一郎JSC理事長の「我々のミッションはあのデザインを前提として工事を進める」という発言からはコスト意識はまったく無く、当事者意識に欠けたものであった。国民の理解を得ようとする姿勢は見られない。

建築家ザハ・ハディッド氏の競技場デザインが五輪招致の成功のかぎだったという意見も出たが、そのコスト面や技術面での実現性はしっかり議論されたのだろうか。根本的なことに疑問が残る。このデザイン選定の責任者である建築家の安藤忠雄氏からの説明はまったく無い。財源についても見通しが立たないまま工事を見切り発車する姿は、舛添都知事が指摘したように大日本帝国陸軍を彷彿させる。血税が湯水のごとく使われる国民にとっては納得できない。

組織委など五輪関係者が胸を張る「オールジャパン体制」とは、破滅に向かって突き進む「国家総動員体制」なのだろうか。このままでは、新国立競技場は2020年東京五輪パラリンピックの「負のレガシー」になりかねない。国民の理解を得られるような計画の見直しを求めたい。(平田秀祐)