無責任体制で突き進んでいいのか、2020年東京五輪パラリンピック開幕まであと5年

(左から順に、国立競技場将来構想有識者会議で会談する森組織委会長、竹田JOC会長、舛添都知事。 平田秀佑撮影)

(ATR Japan) きょう7月24日で2020年東京五輪パラリンピック大会開幕までちょうど5年になる。東京五輪パラリンピック組織委員会がきょう夜、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長らを招いて大会エンブレムを発表する記念すべき日だ。五輪大会は、2020年7月24日から8月9日まで、パラリンピック大会は同年8月25日から9月6日まで開催される。

準備に残すところ5年となったいま、メーン会場となる新国立競技場建設問題など、東京五輪パラ大会の準備や運営をめぐっては、その責任の所在が不明なまま、五輪開催まで漕ぎ着けるか不安になる。東京五輪パラ大会の運営主体が組織委であることは疑いない。14年1月の組織委設立の記者発表資料には「東京五輪パラ大会の準備及び運営に関する事業を行う」と記され、この際、組織委会長に選ばれた森喜朗氏は「スポーツ界、東京都、政府関係者だけでなく、経済界や全国の自治体、関係団体の方にも協力を仰ぎ、招致活動で築いた以上のオールジャパン体制を作って参ります」と宣言した。

「オールジャパン体制」とうたって準備を進めてきたはずだが、新国立競技場の建設費をめぐっては、その密室政治体質と無責任体制が露呈した。新国立競技場建設については事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)に一義的な責任がある。そして、その監督官庁である文部科学省もしかりだ。また、大会運営に関係するから組織委にも、また五輪招致都市なのだから東京都にも、それぞれ責任がある。当初予算からこれまでの間、これら責任主体が建設費を負担する国民への情報開示とその説明責任を果たしてきたとはいえない。

新国立競技場の総工費問題について7月7日、工事の事業主体であるJSC幹部らはこう主張した。「この(競技場を)つくるということが、我々の責任」(河野一郎理事長)、「責任が端的にどこであるかというのは難しい。JSCに間違いないが、それが全てで責任を終えることではない」(鬼澤佳弘理事)、「今現在の2520億円という額で合意しているわけだから、それをきっちり守る」(山崎雅男・新国立競技場設置本部長)。

この問題に関連し、下村博文文科相は「(新国立競技場を)建てるのはJSC」とし、デザイン選定をした安藤忠雄審査委員長は「審査委員会はデザイン案の選定まで。選んだ責任はあるが、2520億円になった理由を私も聞きたい」と強調した。舛添都知事は「文部科学省とJSCの責任」と、また、組織委の森会長は、「競技場の建設は国の仕事で、組織委は関係がない。発言権もない」と、それぞれ強弁した。これら責任者の発言からは、迷走する新国立競技場の建設に関するなんらの責任感も見えてこない。

2013年招致当初の1300億円が招致決定直後に3000億円にふくれあがった。2014年には規模縮小の見直しで1625億円に縮小したが、今年2015年に入りゼネコンの見積もりが3000億円と判明し、さらなる見直しで7月7日、2520億円となった。そして同17日、安倍晋三首相が新国立競技場建設計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すと表明した。あと5年に迫ったきょう、競技場建設問題の責任の所在も不明なまま、解決の糸口さえ見えない状況だ。

契約問題に詳しい松尾千代田弁護士事務所の松尾明弘弁護士はこの責任問題について、「度重なる工事費変更の妥当性について精査を行わなかった機関には、注意義務違反・任務懈怠責任が認められうる」とし、JSCだけでなく文科省や都にも責任があるという。都が建設費を拠出する場合、地方自治法上の住民訴訟もありうる。

組織委のホームページには大会理念がこう記されている。「成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく」。責任の所在を明らかにした開かれた議論やその説明は成熟した民主主義国家には欠かせない。ポジティブな変革とは密室政治と無責任体制からの脱却はいうまでもない。(小田光康)