「進化し続ける日本のエース」渡部暁斗 日本人“初”への挑戦

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(ATR Japan)「Mr.ナンバー2」が金メダル最有力候補に躍り出た。ノルディック複合の渡部暁斗(29=北野建設)が、先月26日から豪州で行われたW杯3連戦を全て制し、さらには今月3日から自身の地元長野で行われたW杯2連戦の初戦でも他を圧倒して優勝した。2戦目では3位となり優勝を逃したが、今シーズンすでに自己最多を更新する5勝目をマークし、翌日に迫る平昌五輪に向け、日本のエースの格の違いを見せつけた。

 ノルディック複合とは、高い技術が求められるスキージャンプと強靭なスタミナを要するクロスカントリーの複合種目である。先にスキージャンプを行い、その記録をタイムに換算する。そのタイムをハンディとして速い方から順にクロスカントリーをスタートし、最も速くゴールした者が優勝となる。瞬発力や持久力など総合的な運動能力が求められるため、その勝者は「キング・オブ・スキー」と称される。

かつてノルディック複合は、ジャンプが得意な日本人にとってお家芸と言える種目だった。体格で劣る日本人は、クロスカントリーでの遅れをジャンプでカバーできたからだ。しかし、その後、ジャンプの比率を下げるなどのルール変更を機に、得意分野を失った日本は停滞期を迎え、94年のリレハンメル大会以来日本に五輪のメダルはもたらされなかった。その長い沈黙を破り、日本に20年ぶりのメダルをもたらしたのが渡部暁斗だ。前回大会のソチ五輪において、惜しくも優勝は逃したものの、2番目に高い表彰台に上った。もちろん平昌では個人金メダルが大きな目標だが、それだけではない。長年遠ざかる団体でのメダルも視野に入れる。団体では共に五輪代表である弟の善斗(26=北野建設)も出場するため、兄弟揃っての表彰台に対して周囲の期待は大きい。

 年々進化し続ける渡部だが、今年は一味も二味も違う。渡部本人「高いレベルで安定している」と語る通り、クロスカントリーの苦手意識を払拭し、もともと得意であったジャンプに磨きがかかったことで、先行逃げ切り型を確立し、シーズンを通して圧倒的な強さを見せている。それでも「五輪に向けてちょっと改善が必要」と一切の油断はない。過去の国際大会では2位が多いことから、「Mr.ナンバー2」や「シルバーコレクター」と呼ばれてきたが、その面影はもはやどこにもない。この種目での日本人初の個人金メダルや団体でのメダル獲得、さらにはW杯年間総合優勝という前人未到の偉業も見据える渡部から目が離せない。(横山大起)

渡部暁斗(わたべ・あきと)
1988年5月26日生まれ(現29歳)。長野県白馬村出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。
白馬高校在学中の2006年にトリノ五輪出場。早稲田大学進学後、2009年にリベレツで行われた世界選手権団体戦において、日本勢14年ぶりとなる金メダル獲得。2010年のバンクーバー五輪では個人9位。大学卒業後は北野建設に入社し、2011-2012シーズンにW杯4勝、W杯総合2位という結果を残す。2014年のソチ五輪では個人ノーマルヒルで銀メダル獲得(複合の五輪でのメダルは20年ぶりの快挙)。今シーズンすでに4連勝を含むW杯5勝を達成しており、平昌五輪では個人での日本勢初の金メダル獲得に期待がかかる。今大会は14日・個人ノーマルヒル、20日・個人ラージヒル、22日・団体ラージヒルに出場予定。