「復興五輪」開幕まで1年、東北被災地に射す光と今後

(ATR Japan)2019年7月24日で、2020年東京五輪競技大会(8月9日までの17日間)までちょうど1年になる。2013年に開催決定したこの大会では、33競技339種目が実施される予定だ。だが、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故のために、大会返上論がしばし浮上した。大会組織委員会はこの大会を「復興五輪」と位置付け、被災地の福島県や岩手県、宮城県の復興を後押しするとともに、五輪を通して復興の姿を世界に発信することを目指している。ATR Japanではこの「復興五輪」の実相について3回連載する。第1回は「五輪イベントで東北被災地に射す光と今後」としたい。

今年の3月11日で東日本大震災から8年が経過した。五輪開幕500日前とも重なり、被災地各地でイベントが開かれた。東京五輪では、福島県で野球・ソフトボール、宮城県でサッカーが開催され、復興への足がかりとなることが期待されている。ただ、福島県内では原発事故の影響で、現在でも住民が住めない「帰還困難地域」が広範囲に存在する。復興の道半ばというのが現実だ。

今年3月17日、ふくしま自治研修センターグラウンド(福島県福島市)で復興五輪の取り組みの一環として野球交流イベントが行われた。このイベントに参加した東北福祉大学(宮城県仙台市)出身で、2004年アテネ五輪野球銅メダルの和田一浩氏は、「これから日本を背負っていく子供たちが、東京五輪を通じて感動したり、色々なことを身近に感じて、活躍していってほしい」と語る。被災地で開催される大会が、地元住民や被災地全体に活気をとの思いをにじませた。

イベントに参加した田川真那斗(12)君は「五輪の野球が福島で開催されるので、是非観戦しに行きたい」と語り、交流イベントを通して東京五輪への期待感を膨らませた。子供たちの間ではイベントをきっかけに五輪への関心が高まっているようだ。ただ、イベントには選手の子供たちとその保護者の姿しかなかった。イベントが地域全体の復興に大きく寄与しているとは考えにくい。東京五輪開幕に向けて被災地全体と歩みを進める取り組みが求められている。

東京五輪の聖火リレーが2020年3月26日、サッカーのナショナルトレーニングセンター、Jヴィレッジ(福島県双葉郡)でスタートする。福島第一原発事故後、Jヴィレッジは東京電力の福島復興本社として使用され、そのグラウンドは放射能の除染物質の一時保管場所として利用されていた。今春、再開しサッカーの合宿地などとして利用されている。

この玄関脇には大きなオリーブの鉢植えが据えられている。「平和の祭典のオリンピックへの象徴として、平和と勝利の象徴のオリーブはぴったりでしょう。被災地の困難を乗り越え、復興五輪といえる大会にしたいい」と鉢植えを寄贈した岩本泰典さんは語る。岩本さんは原発事故後に全村避難となった隣接する川内村で自然エネルギーを活用する蓄光タイル工場を開いた。こうした国からの補助に支えられた復興事業も、これからが正念場となる。「被災地の復興を果たすには住民一人一人の思いと努力が欠かせません。オリンピックをきっかけに、このことをもう一度確かめたい」と話した。

聖火リレーは被災地で開催されるもっとも大きなイベントの一つとなる。一般の人々も応募でき、津波被害を受けた沿岸部でも実施される。聖火リレー初日は楢葉町、広野町、いわき市、川内村、富岡町、大熊町、葛尾村、浪江町、南相馬市を順に回る。これらのほとんどが原発事故被災地だ。いまだほとんどの地域が帰宅困難地域に指定される福島第一原発所在地の大熊町がどのように復興したかも問われる。

組織委は五輪フラッグツアーやアスリートとの交流イベント、2016年リオデジャネイロ五輪と2018年平昌五輪のライブビューイングなど、東北被災地で五輪関連の活動を数多く行ってきた。これらの取り組みから、被災地とともに東京五輪への機運を高めていくという姿勢が伺える。ただ現状は、原発事故に伴う帰還困難地域や大量の放射性廃棄物の問題、震災により傷ついた被災者の心の問題など被災地での復興への課題は山積みだ。今後、東京五輪を通していかに被災地に賑わいをもたらし、復興を支援していくかが課題となる。(伊賀寛修)(南里沙 撮影)

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