エンブレム問題 公募前に佐野氏ら8人に参加要請文書

(ATR Japan)2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は9月28日、使用中止に至ったエンブレム問題について、選考過程の不透明さや反省点などをまとめた報告書を公表した。組織委員会が示した報告書では、エンブレムを公募開始する前に8人のデザイナーに対して、エンブレムの公募に参加するよう要請する文書が送られていたとされている。さらに、審査の結果入選した上位3名はいずれも事前に参加要請を受けており、これには旧エンブレムの制作者である佐野研二郎氏も含まれていた。公募としながら、事前に参加要請したデザイナーが入選しており、選定過程への疑いがさらに強まったかたちだ。

 報告書によると、8人のデザイナーに参加要請文書を送付したのは公募を開始する3日前の昨年9月9日で、エンブレムの審査委員会の代表である永井一正氏が、トップレベルの競い合いを実現したいとの意向を示したため、組織委のマーケティング局長である槙英俊氏の判断で送付したという。事前参加要請と審査結果の関係については民間有識者による調査が必要であるとしている。

▪「おわび申し上げます」と森会長、武藤事務総長ら報酬自主返納

森喜朗会長は会見で「2020年の大会に期待を持ってくださっている国民の皆さま、都民の皆さまにご心配をおかけしたことをおわび申し上げます」と述べ、エンブレム問題について謝罪した。また、民間の知恵を生かした組織の見直しという点から、組織委副会長である豊田章男氏を座長とした改革チームを設置することを発表した。
この問題の責任について武藤敏郎事務総長は「組織委員会として不適切な事務の執行があった。一連の状況はエンブレム策定の組織委員会の業務運営について、事務局として管理、監督が十分でなかった」と述べたうえで、武藤事務総長が報酬月額の20%を2カ月分、副事務総長である布村幸彦、佐藤広の両氏が報酬月額の10%を1カ月分、それぞれ自主返納すると発表した。また、8月28日の記者会見での資料に、インターネット上の画像を無断使用したとして、槙マーケティング局長を戒告処分とするとした。

▪新エンブレム選定へ、委員会設置

一方新しいエンブレムの選考を行うにあたり、「エンブレム委員会」を設置することが、9月29日に行われた組織委の第8回理事会で承認された。委員長には、前回のエンブレム策定の反省やどのようなメンバーで検討していくべきなのかなどを議論していた「エンブレム選考に向けた準備会」の座長であった宮田亮平東京藝術大学学長に決まった。委員には、福岡ソフトバンクホークスの会長である王貞治氏などが選ばれた。デザイン界の人物に偏っていた前回の審査委員会の反省をふまえ、スポーツや法律など、各分野からの人選となった。
宮田委員長は審査過程について、透明性の高い議論と手続きをするとしたうえで、「来年の春ごろにはエンブレムを発表したいという思いがある。そのために10月中頃までには応募を開始する必要がある」と述べた。新しいエンブレム策定には、透明性や国民に愛されるということなどが重要視されている。しかし、それをどのように理解を得られるよう伝えていくのか、厳しい目が向けられる中で、委員会は難しい対応を求められそうだ。(平田秀祐)