「森・石原で決めたこと」と都知事。新国立競技場建設費の都の負担問題で

(ATRJapan)舛添要一都知事は6月5日午後、都庁で開かれた定例記者会見で、文部科学省から新国立競技場の建設費用の一部負担を求められたことに関して、未だ正式に具体的な説明がなされていないことに「必要な情報がないと説明できない。情報を待っている」と述べ、文科省への不信感が払拭できないことをあらわにした。

舛添知事は5月18日に都庁で下村博文・文部科学大臣に、新国立競技場の建設費用の一部負担を求められた際、「説明不足」として5月末までに具体的な総工費や工期に関する情報の提示を求めた。また、都知事は「法的に都が出せるのは(新国立競技場周辺の整備費)約50億円」と説明した。これに対して、下村氏は5月21日、安倍晋三首相に都への要請額は580億円が必要だと説明した。舛添知事はこのことについて5月26日の定例会見で「全くいい加減。支離滅裂」と批判した。これを受け5月27日、下村大臣は「(舛添氏は)当事者意識をもってやってもらいたい」と応酬した。都知事はこの発言に対して、5月29日の定例会見で怒りをあらわにしながら「背信行為だ」と述べ、文科省の久保公人スポーツ・青少年局局長の中間報告についての説明を拒否した。

この騒動に関して、国内報道機関は東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が5月29日、「どっちもどっち。(舛添氏は)知事の資格がない。(下村氏は)大臣の責任がない」と述べたと報じた。その後の6月2日、日本財団の記者会見の席上、森会長が促して、同氏と下村大臣、舛添知事の三人で握手を交わした。翌6月3日、森会長は都内で講演した際、「都が(五輪を)やりたいと言ったんでしょう。都が場所を全部用意するのは当たり前。(知事が)おれは知らんというのはおかしな話。文科相は一度も挨拶してないからまずい。(下村氏に)舛添さんところに行って、よろしく頼むと言いなさい、と言った」と発言した。事態の泥沼化を解消するのが狙いだったようだ。

森会長の発言を受け、舛添知事は6月5日の定例会見で、「おれは知らぬなんて言ったことは一度もない。(情報開示を求めることは)何も間違ってない」と反論した。また、森会長が石原慎太郎元都知事との間で、2016年五輪招致の段階から、新国立競技場の建設費は国と都で折半すると合意していたと公言したことに対して、舛添知事は「森・石原で決めていたことを、下村・猪瀬で決めていたということに森さんがおっしゃったということでしょう。だけれど、それは(密約であり、都が500億円を拠出する)根拠になりませんよ」と述べた。

さらに、都知事は「森さんが、心配くださっているのは良く分かりますけれども、私は都知事としての仕事をちゃんとやっていく」と前置きしたうえで、「私は都知事としての一番大事な職務を粛々と行っている。(下村氏は)誠実に答えを持って来ていただくのが文部科学大臣のお仕事である」と述べた。そして、舛添氏は2016年五輪招致時代から続く都と国の不透明なやり取りを一掃し、「オールジャパンで、透明性を持って議論して、国民でコンセンサスを得る」との考えを示した。

新国立競技場建設費をめぐっては国際オリンピック委員会(IOC)内でも懸念材料となっている。IOC本部のあるスイス・ローザンヌで今週、IOC側の2020年東京五輪最高責任者であるジョン・コーツIOC副会長と森会長がこの問題について話し合う予定だ。(橋本大周)